kondoyukoのカルチュラル・ハッカーズ

踊る編集者が日々のとりとめもないことについて思索を広げる空間

内藤廣の赤ペンメモ #マル秘展 #maruhi

週末は恋人のこりんさんに誘われて、六本木にある21_21 DESIGN SIGHT(以下21_21)の「㊙展」に行った。

21_21 DESIGN SIGHT | 企画展「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」 | 開催概要本展は2020年6月1日より、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開館時間を短縮し、事前予約制により開催いたします。www.2121designsight.jp

21_21自体は以前よく行っていて、京都に住んでいるときは上京するたびに足を運んでいたように思う。なぜなら六本木は美術館がまとまっていて訪問する効率がよいのと、六本木の美術館は多くの美術館が休館する月曜日に開いててくれるからだ。とは言え最近、下手すると上京してからのここ10年ほど、訪問をしなくなってしまった。展示としては、キャッチーで混みそう、もしくは渋そうなものが多い印象だ。

以前はアートを仕事にすることにも関心があったので、「できるだけ多くの展示を見よう」というモチベーションが働いたが、最近はそのモチベーションはなくなり、すっかり個人的な動機になってしまった。いくつか挙げてみると、ひとつは知人やファンをしている作家さんの応援。ふたつめは、ひとつめと関係もしてくるが、「もし買うとしたらどれを買いたいか」という視点で作品を見て、買いたいと思うほど自分にフィットするものは何かと探すこと。みっつめは、作品から受ける印象や作品の解説、アプローチなどから、気づきを得ること。

今回の㊙展、誘われてなんとなく行ったものの、デザイナーや建築家のアウトプットまでの思考のプロセスを、各人独特なやり方で惜しげもなく披露するということで、このみっつめの欲求を満たしてくれた。しかし㊙展、展示タイトルといい各種販促物といい、ちょっと正視するのは恥ずかしくなる感じ。高尚に見えるデザイナーを親しみやすくだったりとか、デザイナーの思考プロセスの開示の民主化だったりとか、そういう意図があったりするのだろうか。

展示は、1953年に設立された日本デザインコミッティーの所属デザイナーが、スケッチや図面、模型などを展示するというもの。日本を代表するブランドのロゴをデザインするまでの数々のスケッチ、著名建築物のコンセプトを考案するための無数のメモやスタディなどが並んだ。

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そのなかで特に印象的だったのが、建築家の内藤廣氏が赤ペンで書いたメモだ。

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メモは手帳や紙に、素朴な図や文字で書かれている。シンプルな解説が添えられていて、それと図をあわせて見ると、内藤さんが考えていることがなんとなく想像できそうだった。建築家の思考の過程として期待するものとしては、とある建築作品を設計するまでの、調査やスタディ、模型や図面だろう。しかし、内藤さんのパートは全編このようなメモと解説ばかりであった。

特に印象に残ったのは、この螺旋のダイアグラムである。

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解説には「Gマークの委員長になって」とあるが、そのGマークがよくわからない。どうやらさまざまな概念を整理しようとしているらしい。自分がいま、ソフトウェア開発の分野でやろうとしていることとリンクしている気がした。そして、この図を解説しているテキストがあったらもっと読んでみたい、と思っていた。

この展示を見終わったあと、入場料を取る本屋であるところの文喫に行った。

文喫 BUNKITSU | 本と出会うための本屋。文化を喫する、入場料のある本屋。人文科学や自然科学からデザイン・アートに至るまで約三万冊の書籍を販売します。一人で本と向きbunkitsu.jp 

文喫は、作業場所としても、気になる本を思う存分手元において、じっくり読むというよりはざーっと斜め読みする体験をする場所としても、気に入っている施設だ。

ここで、内藤廣さんの本も見ようと思って手にとったなかに、まさに先ほど21_21で見たばかりの内藤さんの図とその解説が収録されている本があった。

内藤廣の頭と手www.amazon.co.jp 1,760円(2020年06月29日 23:34時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する  

パラパラとめくってみると、内藤さんの、情報を身体で感じ、咀嚼して、外へ還元していくという内省的なアプローチを感じられた。ちょうど、同じく文喫でパラパラと見ていたU理論の、センシング、プレゼンシング、クリエイティングの3つのプロセスにも通じるところがあるように感じた。

気になっていた螺旋のダイアグラムについてのテキストもあった。螺旋のダイアグラムは、内藤さんがグッドデザイン賞の審査委員長になり、さまざまな概念を整理するために書いたものだと紹介されていた。人間を中心に据え、身の回りの改善から住空間、街や都市、最後は環境へと広がっていく。そんな様子を表したもので、これをもとに議論を繰り返したのだという。

私はこれを見て、自分が関わっているソフトウェア開発の領域も、デベロッパーを中心に据え、身の回りの改善からチーム、会社、世の中。最後は世界や地球、環境にまで関与するイメージを持った。こうした、デベロッパーの成長モデルやリーチできる影響の範囲を考える、アプローチのヒントになったように思う。本当はこれを、いろいろな人に私の考えを伝えて、顔を付きわせて議論できればもっといいのだけど、ちょっといいイメージが沸かない。

しかし、フォーカスする範囲が違えど、自分は内藤さんと親しい視座に立てているんじゃないかと少し誇らしい気分になった。