kondoyukoのカルチュラル・ハッカーズ

踊る編集者が日々のとりとめもないことについて思索を広げる空間

「読書嫌い」だった私が感じる読書の可能性

某ボツ原稿です

「私、実はあんまり本を読まないんですよ〜」

というと、だいたい「えっ、たくさん読んでそうなのに」と驚かれる。

私はメガネをかけていて真面目そうな風貌、極めつけに編集者の仕事をしている。
いかにも読書好きそうなのに、私は読書が嫌いだった。

読書好きな人はまわりにいて、面白そうな本、読んでおいた方がいい本の情報はたくさん入ってくる。

そこで本を買うのだけど、少し目を通して読みきれなかったり、積読したりしては本棚を溢れさせて、自己嫌悪を感じていた。読書家の人に、あこがれと羨望、悔しさの気持ちもあった。

そんな私は数年前、自分の生活の改善に本気で取り組もうと、片付けやダイエットなど、いわゆる「生活実用」のカテゴリに入る本をたくさん読むことにハマっていた。

ダイエットも片付けも、これまで何度もトライしては失敗している。ダイエットは、一度インターネットの情報を頼りに糖質制限をして、3か月で9kg痩せたけど、その後1年経たないうちにリバウンドをしてしまった。

そこで私は、本でしっかりと情報収集しようと決めた。
積読してしまっては意味がないから、解説の漫画版を読んで面白かったらその原作を読むようにしたり、Kindle読み放題サービス「Kindle Unlimited」で片っ端から売れている本を探して読むようにした。

実際その作戦の効果は絶大で、片付けに関する本だけで9冊読んだし、健康やダイエットに関する本は20冊はくだらないだろう。
そうして汚部屋を解消し、1年で10kgの減量も達成できた。

インターネットは質もバラバラで、どうしても散漫な情報を得るだけになってしまう。書籍は、モチベーションを上げる部分と、自分が取るべきアクションがワンパッケージになっている。お金を払っていること、書籍を読み切ったということも、行動変容に対してポジティブな作用をもたらしてくれる。

自分をアップデートしてくれたのは、まさにこれまで苦手だった「読書」なのである。

苦手と言っていたほどなので、読書は基本的に苦痛だと感じる。
そんな私は、さまざまなプラットフォームを試して読書中の体験の良さを追求してきた。

自分の読書体験を変えてくれたプラットフォームとして、代表的なのは電子書籍。
以前からスマホのKindleで本をよく読んでいたが、最近さらに加速している。

なぜなら圧倒的にどこでも読めるから。その瞬間に読みたい本を常に持ち歩いているとは限らない。また、混雑した電車内で本を持ち出すのもなかなか大変である。スマホの電子書籍ならほぼ無制限に本を持ち歩けるし、混雑した空間でも取り出すのが容易だ。

そして圧倒的に早く読めるから。よく紙の本のほうが閲覧性が高いという意見もあるが、スマホのほうが1タップでページ送りができてカロリーが少ない。高速に読んでいくのに非常に楽だ(指先の乾きも気にしなくていい)。あとは目が悪い私にとって文字サイズを変更できるのもUXがよい。

さらに「Kindle Unlimited」がとてもよい。月額980円でKindleが読み放題になるサービスで、自分の読みたいジャンルについて、いいレビューが付いているものは片っ端から読んで全体的な知識をつけるのに活用している。合わないと思ったらすぐチェンジできるのが魅力で、難しかったり合わなかったりする本を避けることができている。

「オーディオブック」という、目ではなく耳で読む読書体験も自分にとってよかった。

当初「本を音で聞くなんてじれったくないか?」と、その利点に半信半疑だったが、オトバンク社の月額750円の聴き放題サービスを利用し始め、月に20冊ほどの本を「聴く」ことになった。

オーディオブックのアプリには倍速再生(最大4倍)の機能があり、この倍速再生が目で読む読書とは大きく差別化できるポイントだ。

目で読む読書だと、「集中力が無くなってくると同じところを何度も読んでしまう」「飽きたらすぐ読むのをやめられてしまう」という特性があるが、オーディオブックで2倍速で聞いていると、私の意志とは無関係に音声は進行する。一字一句聞く必要はない、むしろ聞き流して何か気になったキーワードを気に留めたり、解説されている内容をストーリーとして理解する、といった具合に活用できるのだ。

では、紙の本や書店には意味がないのだろうか。
その新しい価値を探る場所として、六本木にある、入場料を取る書店「文喫」が自分にとって衝撃だった。

図書館と書店のちょうどいい間をとっている文喫は、原則本は1冊しか入荷しておらず、ビジネス書や哲学、サイエンス、実用書、スポーツ、アートに至るまでさまざまなジャンルが展開されている。全体に対してアートが少し多め、ざっと見でよければ書棚全体をかんたんに見通せるレベルの規模感だ。

ここは本をがっつり読みに行くというよりはむしろ、本からさまざまな異なる概念に触れ、それらをつないでコンセプトメイキングをするために活用できそうだ。

そのようなイマジネーションは、デバイスに所有している本よりむしろ、自分の目の前に積んである本の山から得られるような気がする。

「読書が苦手」だからこそ、読書が嫌にならないようなプラットフォームを求め、読書中の体験を最大化したいと思い、本に貪欲に向き合っていた。
読書中や読書後のUXも含めて本なのだ。

編集者というのは単によいコンテンツを作ればいいわけではない、特に専門系編集者は、対象者の学びや成長、自己変革にどう関与していけばいいのかをさまざまなメディアを活用して考えることが求められよう。

「出版業界は終わっている」と何度も言われるこの業界の、未来の姿が見えてきた。
《終わり》