kondoyukoのカルチュラル・ハッカーズ

踊る編集者が日々のとりとめもないことについて思索を広げる空間

昭和のとあるぬりえ作家にフォーカスした美術館「ぬりえ美術館」(東京都・町屋)

先週、都電荒川線(東京さくらトラム)に恋人と乗る機会があったのだが、彼が「町屋二丁目に行きたい」と言い出した。というのも、気になっていたカフェがそこにあるらしい。私は「町屋二丁目」という地名も駅名も初耳だった。私達はカフェに行くために、町屋二丁目に向かうことにした。

カフェは15時からオープン予定だが、私達がついたのは14時半くらいで、少し時間があった。周囲をGoogleマップで見ると、ちょっとした飲食店があるくらいで、あとは住宅地のようだ。しかし我々は、駅の北側に「ぬりえ美術館」を見つけた。

ぬりえ美術館:トップページ世界で初めての「ぬりえ美術館」。国内のぬりえだけでなく海外のぬりえもコレクションしています。東京都荒川区町屋www.nurie.jp

「ぬりえ美術館」で私がイメージしたのは、子どもや高齢者によるぬりえ作品を展示するという市民ギャラリー的なものだ。Googleマップのレビューにある画像を見た恋人は「ゆうこさんが好きそうだよ」と言った。見てみると、なんとなくサブカルな匂いも感じると言うか、どことなく興味を惹かれるものがあった。我々はぬりえ美術館に向かうことにした。

本筋からそれるが、道すがらに見つけたスナックのおしゃれな看板。

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そしてこれがぬりえ美術館の外観だ。外壁には、大きく「ぬ り え」と書かれている。

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「あれ、悪くない……?」と私は思った。

ぬりえ美術館は土日しか空いていないらしい。もう二度と来ることはないだろうと思い、我々は入館することにした。

ぬりえと一口にいっても、このぬりえ美術館では、主として昭和20年代、30年代に活躍した、ぬりえ作家の蔦谷喜一(きいち)の作品にフォーカスしている。

展示室はこのような雰囲気で、表に出ているもののほか、引き出しを出して鑑賞できる作品も多くある。

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こういったカラーの絵を見ていると、子どもの頃に持っていた羽子板に描かれていた絵を思い出す。その絵をきいちが描いていたわけではないだろうが、少女向けイラストへの影響力が大きかったのではないかと想像する。

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きせかえもかわいい。

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童話シリーズも今に通じるかわいさ。

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企画展として、美空ひばりのぬりえが展示されていた。これは実写の写真とイラストを混ぜたもの。自分をネタにした作品を作るときにこういう意匠はおもしろかもと思った。

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きいちが、ぬりえのモデルにしたというアメリカの子役スター「シャーリー・テンプル」。

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きいち以外の作家のぬりえや、海外のぬりえも展示されていた。

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ぬりえは、子どもの遊び道具として、そして安価にかわいらしいイラストを届けるツールとして、当時広く普及していたんだろうと想像した。館内に流れる紹介ビデオでは、きいちのぬりえは時を越えて、現代(登場する人物のテイストから90年代?)の原宿に集う女性をも「かわいい」と魅了する様子が描かれていた。一般向けに、かわいくて質の高いものを届けようと思い作られたものは、こうして長い間古びない魅力を持ち続けるのだろう。