アナフィラキシーショックで緊急入院した話

土曜日にアナフィラキシーショックを起こし、全身じんましん+血圧低下+意識障害を起こしたので、救急車で運ばれ、ICUに1泊入院しました。救急車での搬送以降、意識もしっかりしていて経過も順調なため、搬送からだいたいまる1日後に退院しました。

新型コロナの影響で、ベッド数が足りず、救急搬送ができなかった事例も多くあるなか、スムーズに搬送いただき、異変が起こってからおそらく最短の時間で処置していただき、その後も順調でした。医療従事者のみなさま、本当にありがとうございました。

一連の流れで起こったこと、感じたことなどを記録していきたいと思います。

アナフィラキシーショックとは?

日本アレルギー学会が発行する「アナフィラキシー ガイドライン」によると、アナフィラキシーアナフィラキシーショックについて、次のように記載されています。

アナフィラキシーとは・・・アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応

アナフィラキシーショックとは・・・アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合

アレルギー反応が、複数に渡って全身に急速に出る症状が「アナフィラキシー」と呼ばれているようです。

アナフィラキシーの症状はさまざまです。もっとも多いのは、じんましん、赤み、かゆみなどの「皮膚の症状」。次にくしゃみ、せき、ぜいぜい、息苦しさなどの「呼吸器の症状」と、目のかゆみやむくみ、くちびるの腫れなどの「粘膜の症状」が多いです。そして腹痛や嘔吐などの「消化器の症状」、さらには、血圧低下など「循環器の症状」もみられます。これらの症状が複数の臓器にわたり全身に急速にあらわれるのが、アナフィラキシーの特徴です。

アナフィラキシーの症状」(アナフィラキシーってなあに.jp|ヴィアトリス製薬株式会社)より

今回私が経験したのは、アナフィラキシーの中でも、皮膚や粘膜へのアレルギー反応に加え、血圧低下や意識障害が伴い、最悪死に至る恐れがある「アナフィラキシーショック」とのことです。

これまでのアレルギーについて

アレルギーについて、4年前に血液検査をした際には、ヤケヒョウダニとハウスダストが強く反応していて、それ以外の花粉や食品については目立ったアレルギーがありませんでした。

昔から、鼻炎や皮膚の湿疹などが慢性的に続いていましたが、最近は引っ越ししてハウスダストに比較的悩まされにくい環境に移り、鼻炎も皮膚の症状も良くなっていました。

1年前、8月のお盆の大変暑い時期に屋外を歩き、その後キンキンに冷房の効いた屋内に入り「なんだか皮膚がピリピリするな……服に洗剤でも溶け残っているのだろうか(過去に柔軟剤で湿疹ができた経験あり)」と思っていたら、蚊に刺されたようなぶつぶつが顔や体の全身に広がっていきました。

このような経験は初めてで大変おどろいたのですが、インターネット検索によると、これが「じんましん」であることを知り、原因は、特に食品アレルギーに心当たりがなかったので、暑い屋外から寒い屋内に入ったことによる「寒暖差アレルギー(寒冷アレルギー)」では無いかと考えていました。

その後、今年の春~夏にかけて3回ほどじんましんの症状がありました。1回目に起きたじんましんほど広範に広がるものはありませんでしたが、今思えばその中には、温度差に起因するものが無い時もあり、鎮痛剤を飲んだからだろうか、スパイスを多く摂取したからだろうかと気になっていました。

よく土日に症状が出るため、なかなか通院できずにいたのですが、タイミングよく皮膚科を受診できたときには、アレルギー薬を処方されたので「症状が起こったらアレルギー薬で抑えればいいんだな」と考えていました。

当日、アナフィラキシーショックを起こす前後のこと

当日は昼食にピザとコーラをいただいた後に、屋外を歩いて、スーパーに買物に行きました。当日の天気は曇りで、気温は30度ほど。暑いけど「じんましんを起こすほどではないかな」と考えていました。

スーパーに入るとやけに寒く、「ちょっとこれはじんましんが出そうだ」と思っていたら、マスクや服に当たる部分がピリピリとして、じんましんができ始めました。早々に徒歩で帰宅したら、じんましんが全身に広がり、強いかゆみが起こっていました。

アレルギー薬を飲んで「これで大丈夫だろう」と思っていたら、なんだか視界が歪んで見えるようになってしまいました。「視界がおかしい」と、同棲しているパートナーに訴えたところ、「救急車呼ぶ?」と言ってくれ、その後すぐに私は一度意識を失ってしまいました。体感的には「あ、寝てた」という感じではありましたが。

電話がつながり、彼が受け答えをしている間に、「私も受け答えしなきゃ」と思って一度意識を取り戻したのを覚えています。

救急隊員の方による搬送

その後、救急車が来るまで必要な物を準備したりしていたのですが、救急車が来るまでに「トイレに行きたい」と思い、トイレに向かって歩いていたら、いきなり倒れてしまいました。横になってたら落ち着いてきたので、あろうことか再度トイレに行こうとし、鍵をかけて、そのまま失神してしまいました。

救急隊員の方がいらっしゃり、呼んでも5秒くらい反応がなかったのでだいぶ心配させてしまったようです。「ヤバい」と思ってパッと目が冷め、目を開けたところ意識障害の影響か視界がまっくらで、手探りで鍵を開けました。

その後、救急隊員の方に椅子に座らせてもらい、酸素マスクを付けて、血圧を測ってもらいました。「これが今、足りなくて困っている酸素……」と思いながら、ありがた申し訳なかったです。血圧はかなり低めだったようです。救急隊員の方の判断は「重症」「死に至る可能性がある」とのことで、大変びっくりしました(今回については最初だけ意識障害が起こったものの、病院に搬送されてからはとても順調で、穏やかに過ごしていました)。

搬送先が見つかったとのことで、椅子に座ったまま屋外まで運ばれ、ベッドに寝かされ、救急車に乗り込みました。「起きていてくださいね~」と言われ、しゃべっている方がいいだろうと、受け答えもできるだけするようにしていました。

救急車の到着から、病院の搬送まで、非常にスムーズな印象を持ちました。

ちなみに、パートナーが、救急隊員の方より「2人ともワクチン2回接種済みか」と何度も聞かれたとのことです。私もちょうど、搬送3日前に2回目のワクチンを打ったところだったので、ワクチンの接種の有無によって対応が変わってきたかもしれないと思うと、本当に運が良かったと思います。

救命センターでのできごと

搬送されたのは、自宅から3kmほどにある杏林大学病院 高度救命救急センターでした。自宅から近いところに救命救急センターがあって本当によかったです。

まずは1階で一時的に処置を行いました。最初はみなさん防護服を着ていらっしゃったのですが、新型コロナの検査(鼻からいれるもの)を行い、陰性だったのでその後は防護服を脱いでいました。

両太ももの付け根から注射をされ、右手から点滴、左手からは血圧を常にモニタリングするため、動脈にカテーテルが差し込まれました(普通の注射よりは痛かったですが思ったより大丈夫でした)。

一時的に処理をしてくださったみなさんは、私の意識がはっきりし、明快に受け答えをしているからか、救命救急の緊迫したイメージとは違って、終始和やかな印象でした。例えば、私たちの受け答えに合わせてベストタイミングで機械がおしゃべりしたときには、笑いが起きていました。気持ちがリラックスしたのを覚えています。

彼が処置室に入ってきて、必要な書類を代筆してもらい、ICUには必要最低限の荷物しか持ち込めないので、彼に荷物を預けました。

その後、心電図や肺のレントゲン、頭と体のCTなどを撮り、ICUに移ります。

ベッドに横たわったままICUまで移動しましたが、ICUのあるフロアは、天井から自然光を取り入れ、非常に明るく開放感のある空間でした。個室に入りましたが、個室にも天窓から柔らかい自然光が入ってきます。ちなみに第4回 病院建築賞を受賞しているとのこと。

www.dandd.co.jp

ICUに入ったのも、アナフィラキシーショックは24時間以内に再発する可能性があり、しっかりと管理する必要があるからとのことでした。

基本的には右手の点滴、左手の動脈に入れた管、心電図、指先の酸素濃度計が常に繋がれている状態で、お手洗いに行きたいときだけ、管を外して歩いてトイレまで連れて行ってもらいます。

排泄について、最初は「尿道カテーテルと、ベッド上や簡易トイレでの自力での排泄、どっちがいい?」と聞かれて、カテーテルも痛そうだったので「どっちがおすすめですか?」と聞いたところ、意識もはっきりしているので自力の方がいいと言ってもらい、そうすることにしました。結果、ベッドで用を足す必要もなく、トイレに行かせてもらえることになりました。毎度管を外してつけたりするのは申し訳なかったですが、時折歩けたのは気晴らしにもなり、恥ずかしさなどの観点からもQoLも高くてよかったです。

最初は非常に寒く感じていたのですが、着圧ソックスのようなものを履かせてもらってからは寒気がなくなりました。

携帯を持ち込めないため、「暇でしょう」ということでテレビを持ってきてもらい、ずっと見ていました。こんなにゆっくり見ていたのは実家で過ごしたとき以来だと思います。

ニュース番組のフラッシュニュースを見て、はてなブックマークホッテントリを見ている気分になったり、ニチアサをまじまじと見たり。

土曜夜にEテレでやっていた、「SWITCHインタビュー 達人達」で、俳優の柴咲コウさんと、マルクス研究者の斎藤幸平さんとの対談を興味深く見ていました。

www.nhk.jp

柴咲コウさんの、俳優業に対して、歌唱なども含めて仕事に向き合って色々なことに研究熱心になり、「飽きることがない」と言っていること。そして植物を愛でたり、2拠点生活などにも取り組んでいること。そして斎藤幸平さんがもともとは金髪のバンドマンで、アメリカの大学に渡ったところ、その格差に衝撃を受け、研究に取り組み、今ではデリバリーサービスの配達員など興味があることをさまざまに取り組んでいること。そして今は「資本主義ではない新しい考え方がないか」と模索していること。二人のチャレンジ精神や研究熱心さがすごく面白いなぁと思って見ていました。斎藤さんの著書もポチっちゃいました。

というような感じで、思考できる余裕もあり、終始のんびり、ゆったり過ごしていました。しんどさで言えば、入院2日前のワクチンの副反応の方がよほどキツかったです(それでも発熱は37度台で大したことないほうだと)。なので、「私はICUにいる患者のなかで日本一元気なのでは」と思うほどでした。

翌日朝の皮膚科の先生の診察で、退院してよいことになったので、無事に退院となりました。

アナフィラキシーショックの原因の予想

先生や看護師さんと、アナフィラキシーショックの原因について話していたところ「小麦が原因かもしれない」と言われました。過去のアレルギー検査ではまったく該当しておらず、過去、小麦の料理を食べて問題になったこともありませんでした。

ところが、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」というものがあるようです。

www.meiji.co.jp

shibuya-naika.jp

これは、食事をしてから数時間以内に運動をするとアナフィラキシーの症状が出るというものです。そういえば、じんましんが出たときに食べていたものをふりかえってみると、何らかの形で小麦が含まれていました……。

運動といっても、スポーツなどはやっておらず、散歩だけなのですが、長時間散歩したり、暑い中を移動したりしたのがスポーツと同様の体力消耗になっていたのかもしれません。

また、以降は自己判断ですが、暑い屋外とキンキンに冷えた冷房という急激な温度変化が何かしらのトリガーになっていそうなのと、他に気になるところは、あるときは生理痛のため鎮痛剤を服用したり、あるときはスパイスたっぷりのインドカレーを食べたりしたのも少し気になっています。

しかし過去には、小麦粉が含まれている食品を食べ、散歩したどころかジムで運動をしたこともあり、全く何も起こらなかったので、こういうものはいきなり起こるんだなぁとびっくりしています。

皮膚科の先生からも「小麦を食べたら3時間は運動しないで」と言われてしまいました。きっと暑い夏でなければ、近所の飲食店で食事をして、ゆったりと歩きながら帰宅する分には問題なさそうにも思うのですが、一度アナフィラキシーショックまで起こしてしまったこともあり、次に搬送されてしまうことがないよう、慎重に過ごしたいと思います。

今後について

今後の検査や治療については、一度かかったことのある、比較的家から行きやすい皮膚科の病院に紹介状を出してもらいました。アレルギー検査をしたい旨は伝えて、今後の方針などは相談したいと思います。場合によっては、アナフィラキシーが起こった際に症状を緩和する「エピペン」という注射を処方してもらうこともあるとのことです。痛そうで躊躇して打てないのでは……と思ったのですが、経験者の方のブログから、痛みは感じなかったとあったので、少し安心しています。

組み合わせない限り大丈夫そうではあるのですが、しばらくは小麦そのもの、屋外での長時間の散歩、そして気になる行動は避けて、慎重に過ごしたいと思います。

それにしても「原因(暫定)は小麦だったのか……」と、ショックを受けています。今はまだいいのですが、コロナが今後落ち着いて、生活が徐々に戻っていくと、旅行や遊びでも小麦製品を控えないといけなさそうですし、今後どうなるか分かりませんが、出社やお仕事での外出でアナフィラキシーがもし起きたらと思うと不安です。まぁ、仕事の場合は昼食などで小麦を取らなければ大丈夫そうではあるのですが。

過去、糖質制限をしていたこともあり、今は糖質は制限していないものの、GI値の観点から「小麦は控えた方がいいかなぁ」と薄々考えていたこともありました。グルテンフリーも注目されているということで、これを機に、小麦の体への影響についてインプットして、食事を見直す契機にしたいなと思います。ということで以下の本をポチってみました。

今回、アナフィラキシーショックで緊急入院しましたが、たいへんスムーズに、的確に医療が受けられたおかげで、無事に回復し、ありがたかったです。また、今後の状況がどうなるか分かりませんし、医療リソースを逼迫しないよう、アナフィラキシーについては細心の注意を払っていきたいです。医療従事者の皆さま、同居のパートナー氏に大変助けられました。本当にありがとうございました。